2009年5月15日金曜日

SEトレーニング最終日

いよいよ最終日。クラスのみんなとも距離が近くなっているだけに名残惜しい。
朝は,アシスタントのAleによるゲームを通してのグループワーク。彼は凄くいい眼をもっている。いいロルファーとSEを通して出会えてうれしい。
お昼休みにアシスタントのTerryから個人セッション。SEの次のステップに進むまでに個人セッションと数回受けることが義務づけられている。これはRolfing同様,他者をサポートするためにはプラクティショナー自身が統合されている必要がある。Terryには,Massage table上でのセッションをリクエスト。実習より言葉は少なく,ボディワークが多い。タッチのクオリティも高く,ロルファーとしては参考になる。残りの昼休み時間に肉まんをほおばっていると,wifeからメールが。ここ数日wifeは,息子から水疱瘡がうつって,高熱が続いていた。とうとう症状が悪化して自力で救急車を呼んで,病院にいるとのこと。メールを見たときに,さすがに凍りついたが,ここ数日のワークの成果を利用して,自分をなんとか落ち着かせる。
午後,遠方からきている参加生が早めに帰るとのことなので,一緒に挨拶して,主催者の皆さんにお礼をいって,会場をあとにする。
SEは,心のケアと,からだの技法を絶妙につなぐところに位置している。ロルファーとして様々なワークショップに参加したことがあるが,心をケアするプロの方々と同じことを一緒に学ぶ機会は初めてだったが,参考にすべきことも多く充実した体験だった。ロルフィングだと,当たり前だが触れることが前提条件になっているが,心を扱う人たちは,触れることにとても慎重なのだ。SEの実習やデモを通して,タッチを通さなくても実際に身体と心の状態が変化することを実感したし,しかもまだ,このトレーニングは始まったばかりなのだ。にもかかわらず,ロルファーとしてこのSEトレーニングはmustであるといえよう。resourceの重要性も再認識できた点も大きい。


日本で最初にトレーニングを開催するというのは大変なことである。SEの有効性と可能性を感じれば感じるほど,主催してくれた藤原さんのモチベーションは高まって今回の開催実現につながったのだと思う。しかし,トレーニングのオーガナイズ,講師通訳,アシスタント,昼休みの個人セッションと,あまりにもハードワークすぎ。
全課程の6分の1しか終わっていないので,十分休息して,残りをできるだけ無理なく続けてほしいと思う。Maggieをはじめ,すばらしいアシスタントを呼んで,すばらしい生徒さんを集めてくれて,本当にありがとうございました。







PS.  電車に乗ると,妻からメール。あまりのひどい扱いに病院を出たいと主張しても出してくれないという。運悪く連休中の新型インフルエンザ体制の病院はほとんどが,受付を拒否しているとのことで,なんと,どうみてもここ昭和の長屋だろ!ってつっこみたくなるような病院とはいえない建物に搬送され,トラウマティックな扱いを受けていた。
医師がいる時間内になんとか到着して,wifeを引き取って帰宅。唯一ビタミンの点滴で活力はでたが,信じられないような注射針の刺し間違えで腕はどっかの銀河の星雲のようになっていた。

2009年5月5日火曜日

SEトレーニング5日目

昨日のデモセッションに関しての説明から開始。
バーストラウマに関しては,例えば出産時に母胎には問題のない出産だったとしても,それが胎児側にとって問題のないものだったかどうかは,別の問題で,例えば帝王切開で生まれたようなケースでは,産道を自力で通り抜けるプロセスを省いて生まれる。生物学的に未完結の動きを完結させようとする衝動は,内包される。同様に,生物が危機的状況に陥って,凍りついた後に,回復するためには,生じた神経系の高ぶりを"放電"するための"動き"を通して完結する必要がある。これら,一連の未完結な状態を終わらせない限り,野生生物にみられるトラウマのない正常な神経系のバランスを取り戻すことができない。SEは,自覚はできないが確かに潜在する,発達段階で生じたトラウマを解放できる可能性を昨日のデモは示唆していた。
実習の続きを終え,午後はレクチャー後にまた実習。臨床心理士とクレニオセイクラルバイオダイナミックスプラクティショナーの方と3人ペアになる。アシスタントのYuriさんの凄い技による補助でまたまた凄いセッションを観る。人はSEで何かが完結することでこんなに輝くものなのか,とひたすら感心。

2009年5月4日月曜日

SEトレーニング4日目

朝,Maggieが私の状況をチェックするところから開始。今朝起きたプロセスを報告する。何をシェアしてもジャッジされない環境は居心地がいい。昨日の3人ペアの実習の続きを午前中を使って行う。午後は,別の参加生をモデルとしての公開デモンストレーション。
これがまた深いセッションだった。出生時のトラウマに関係する内容だった。本人も周囲も気がつかないレベルでトラウマが存在する可能性を認識した。実際,トラウマがどう起きたのかどうか分析や検証することもできないが,それは問題ではなく,SEによってクライアントの眼の質感や視覚の使い方が明らかに変わり,表情が柔らかくなる等の変容するという事実が重要なのだ。興味深かったのは,眼が途中で,幼児のような何の情報処理も行っていない眼になった質的変化もさることながら,発達段階で生じる様々な原初的な動きが開始し,何度もディスチャージする反応も観察された。SEの可能性は想像以上だ。
クラス内でその深い体験を共有する。とてもいい一日だ。
また,3人ペアになって実習を行う。ペアになったのはイメージ療法を活用しているカウンセラーの方でやはり誘導がうまいことに感心する。
クライアント役になると,自分の眼球が不随意に左右に動く反応がでた。また一段階自律神経系が統合されているような気がする。


2009年5月3日日曜日

SEトレーニング3日目

3日目は,午前中チェックインに続いて一人をピックアップしてデモを行う。かなり深いところまで掘り下げたデモだった。
午後になって,Maggieがいざ”誰かボランティアはいないか?”という問いかけに,一つ思い切って手を挙げると採用されてしまった。デモで自分をさらすのには,かなり勇気がいることだが,クラス内が安全な環境なので,抵抗は少なかったが,いざMaggieの目の前に座ると,心臓が高鳴った。扱ってほしい題材を選んでほしいとの問いに迷わず,自分の交通事故体験を選んだ。
手短に起きたことを告げると,Peter Levine氏も同様に歩行者の立場で車にはねられた経験があり,それについて一冊本を書いているそうだ。Peterとの共通性に驚きつつも,一連のことが自分をサポートしてくれているなんともいえない暖かい感覚が胸を包む。
当時の状況を少し詳しく述べようとした瞬間,Maggieが,身体への感覚を感じるように促す。そのタイミングが絶妙だった。トラウマ体験の嫌な状況に浸るかなり手前で,それを遮り身体感覚を追跡するトラッキングを開始した。胸から暖かい感覚が生まれ,右の脚へ移動していく。そのうち身体が内側から揺れる動きがでて,頭が上を向く衝動に委せてみると,事故のときの光景が浮かんだ。
絶妙なタイミングで,Maggieが私の足を軽く足で押さえた。それによって,不安定な浮遊感はなくなり,しかし濃すぎない支えをもらって,身体が安心感を感じている。
次に,ふと身体が着地した草むらが背中の上の方に感じられ,その感触を思い出す。その心地よさを感じていると,身体全体に静かで落ち着いた感覚が満ちてきた。ふと上から自分を見下ろしている同級生の顔が浮かんだ。それを感じるようにMaggieに促される。る。どんな感じ? →なんとなく心配して見守ってくれている感覚を思い出し, ”悪くない”と答えた途端,涙が右の眼から流れてきた。止まっていた何かが一緒に流れてきたようだ。涙の温度と感覚を味わっているうちに左眼からも涙が落ち,なぜか笑いがこみ上げてきた。背中に残る草むらの感触は依然として自分を支えてくれている。身体全体が楽になっていて,気持ちも落ち着いている。
セッション前に周囲を見渡したときには,クラス内の様子が視界に入ってはくるが,均一に見えるというよりは,まだらな感じがした。ところが,今セッションを終えて周囲を見渡すと,視界がはっきりして,より細かく感じられる。参加生の顔もクリアにみえるのと面白いことにセッション前はスキップして見ていた人々がいることにも気がついた。クラスの仲間の顔にも表情が感じられ,見守ってもらった暖かさを感じる。明らかに外界の捉え方が変わっている。
トラウマを扱われるということで,身体は最初身構えていたが,開始するとすぐに安全な感覚とつながることができたので不安な感じはなかった。そして,意外にも後半は会場に爆笑もあり,湿っぽさはなかった。Maggieにリードしてもらったが,基本的に自分の中でプロセスが始まり身体の知性が働き初めてその流れにうまくのる手伝いをしてもらった感じで,外部から誘導されたり何かを強要される感じは全くなかった。
 Maggieのセッションはまさにアートだった。自分が事故のストーリーを語り始めようとしたちょっと手前に,身体に注意を戻し,トラウマの渦に入っていくかなり手前で,今に意識を戻すそのタイミングは,絶妙だった。足に触れるタイミングも,ちょうど不安定感を感じはじめた丁度そのときだったので,それは外から注意深く微細なこちらの身体の変化を読み取ってくれたからなのだと思う。セッションはデモということもあり非常に短いものだったが,体験は深かった。そして,このプロセスは続くという。パーティにいったりはせず,たっぷり睡眠をとることを勧めるとのこと。夢を見るかもしれないという。

クラスは,その後,簡単な題材を選んで,3人ペアでの実習。

その日帰宅は遅かったので十分な睡眠はとれなかったが,明け方に目が覚めたと同時に,事故時の車のボンネットに載っている状況が浮かぶ。ボンネットが自分を柔らかく受け止めたときの感覚を背中で感じる。それは堅いものではなく,むしろ柔らかいものとして感じられ,同時に背中が実際にふっと柔らかくなる。左の股関節/大腿骨が震えるような動きがでて,何かが流れはじめる。実際には車にはねられた瞬間に意識を失ったが,証言では空中に放り投げれれた後回転して,車のボンネットに一度着地してそのあと舗装された道路横の草むらに落ちたのだという。その事故体験はまるごとネガティブなものとして捉えていたが,車に一度受け止められていなければ,アサファルトに直撃しただろう。それを思い出すと,車は自分を傷つけただけでなく,助けてもくれたのだと気がつく。また,日常で椅子に座るときに自分は椅子の背もたれに身体を預けるのがなんとなく苦手なのだが,それはこれら一連のことが関係していると妙に納得し,うとうとしながら,また朝までの数時間眠った。







2009年5月2日土曜日

SEトレーニング2日目

講師のMaggie Klineはすばらしい。質問に対する答えも的確だし,ゲシュタルトやボディワーク等を学び,豊富な臨床経験に裏打ちされたたたずまいはエレガントで,しかも気さく。休憩時間は,海外からボランティアで参加しているアシスタントとのコミュニケーションもちょっとづつ進む。Bay areaから来たTerryに,Jaiを知っているか?と聞くと知っているといって驚いていた。世界は狭い。アシスタントの中にはロルファーもいて,彼の名はアレー。被災地での救援活動に積極的に参加してきた経験があり,四川省の大地震や,スマトラ沖大地震後,現地入りして活動してきたらしい。被災により瓦礫の下に長時間閉じ込められた子供にワークした話は興味深く感動的だった。SEの多くの可能性を再認識した。こうした活動は,Foundation for Human Enrichment(人間の質的向上のための財団)を通じて,SEによる社会支援が行われているとのこと。
私がSEに惹かれた理由の一つに,私自身の30年前の交通事故体験がある。中学生だった私は歩行中に車に当てられ,気がつくと車道脇の草むらに着地していた。ずっと謎に思っていたのが,強い衝撃が身体に加わっていたはずなのに,事故直後痛みを全く感じることなくただそこに横たわっていた。なぜ身体のどこにも痛みを感じなかったのか?手にわずかにかすり傷もあったが,それすら,痛みがなかったのだ。
しかし,その答えをPeter Levineは持っていた。捕食される側の動物は,捕食者に捕らえられる直前に身体の感覚を遮断し,凍りつく反応を自動的に起こす。それによって捕食者に肉体を捧げるが,全感覚が遮断されているので,痛みを感じることはない。自然の摂理が生んだすばらしいメカニズムだ。動物本来の,"戦うか逃げるか"の2つの反応にもう一つの"凍りつき"を加えたのが,Levine氏である。凍りつきを起こしても,自然界の動物は,危険が去った後に,凍りつきを解除し,神経系を正常に復帰させるために,チャージされたものを解放する動きを自発的起こす。この解放のプロセスが完結されないと,皮質レベルの思考では危険がないことが分かっていても,身体は今安全であるとは納得しない。そのために,何かちょっとしたきっかけで,身体が過剰な反応を起こしたり,長期に渡って,自律神経系に悪影響を及ぼし続ける。これがトラウマのやっかいな点である。
SEは,トラウマの体験そのものに焦点を当てない。それを追体験したり,詳細なストーリーを語る必要はなく,副交感神経が活性された安全な環境を提供し,身体感覚を通じて”今”にクライアントを引き戻すことに焦点を当てる。それによって,初めて神経系は混乱から抜けだし正常化に向かうことができる。
自分も含めて,トラウマ体験を扱う必要があると知りながらも,嫌な思いをした割に何の成果もないような治療は受けたくないと思っている人々は多いのではないだろうか?

SEのクラスに話しを戻そう。
2日目の今日は,野生動物のふるまいに関するビデオを観て,身体でそれを体験。続いて軽い題材を選んで,ペアを組んで実習。組んだのはカウンセリングを仕事にしている方だけあって,問いかけや傾聴のスキルが高いことに関心する。

2009年5月1日金曜日

SEトレーニング開始

日本で初となるSomatic Experiencing®(以下SEと略記す)トレーニングが開始した。
手法の創始者であるPeter Levine氏は元々ロルファーで,Rolfing®との親和性も高い。なにより,トラウマ治療の最前線にあり,その短期的および治療効果が高いことが知られている。田畑は,Rolfing®の'98年のUnit 3クラス中に開催されたワークショップでSEの存在を知ったが,信頼するロルファー仲間の何人かが,Rolfing以外にSEも実践していることから気になっていた。ちょうど,今年に入って,京都で開催されたRolding® Unit 2トレーニングのアシストする期間中に,自分の恩師でもあるLael Keenにインタビューする機会があり,そこでSEの話がでた。偶然その後すぐに,Rolfin®トレーニングのクラスメートであるBay area在住のJaiから,Helloメールを2年振りにもらった。SEが急に目の前にちらついてきたため,SEプラクティショナーって日本にいるんだろうか?と思ってネットで検索したら,なんとSEトレーニングが日本で初めて開催されるではないか!?これは,どう考えても"It's time !"即申し込んだという経緯である。

初日は,緊張する。どんな面子だろうか,信頼できる人たちだろうか?講師ははずれではないか?講師が当たりでも取り巻きにがっかりすることもある。午前はほとんどが自己紹介に費やされる。カウンセラー,精神科医師,臨床心理士など精神面のケアをする人たちが大半で,ロルファーは私を含め5人参加。全員がまじめに学ぼうとする気迫があるのと,基本的に守秘義務を守る姿勢があるので,ほっとする。こうしたトラウマを扱うような場では安全で信頼できる環境が必須だからだ。
午後は,トラウマ理論と,導入となる実習。初日としてはまずまずの出だしだ。





2009年4月13日月曜日

Somatic Experiencing®とRolfing®

コンピュータの性能を向上させるために,CPUなどの本体のハード面を強化することに加え,それを動かす基本ソフトであるOSのバージョンアップも重要である。
Rolfing®は,人間のハード面を整備し,Rolf Movement®は,この基本OSを充実させ,応用的な動きをするソフトとの連携をスムーズにしてくれる。一方,長くコンピュータを使用していると,様々な原因により,基本ソフトにバグが生じる。バグは人間でいうトラウマのようなもので,Somatic experiencing®は,このバグを解消し,元のサクサク快適に動くマシンに回復する手助けしてくれる技法である。