2011年5月10日火曜日

被災地での実際のワーク

5月9日(日),宮城県七ヶ浜国際村での支援活動の中で,5人の方にワークする機会を得ました。

災害時のストレスによる過剰な神経系の高ぶりによりチャージされたエネルギーを解放しつつ,グラウンディングを促すためにタッチを多用しました。一人当たりのワークする時間は,約15分〜25分程度でまとめました。

Case A

70代女性。岩手で被災。津波に流され,左脛骨を骨折,手術が不可能だったため固定のまま入院を続け,先週退院したとのこと。骨折した側の脚をかばうためか,反対側と上半身に慢性的な緊張が常にあるとのこと。会場入り口でご家族でいるところに話しかけてワークを受けてもらうことに。
ワークの内容: まず骨折していない右側の足のグラウンディングをタッチにより誘導する。大腿部が座面に預けられように,そして足が地面を捉えやすい状態を引き出す。解放が起き,触れていない側の骨折した足裏や足指に感覚が回復。足裏が地面に吸い付いているかのような感覚が出してきた。
次に両手が温かい感覚(解放のサイン)が出てきて,肩から手,お腹から骨折した足の方向に何かが流れる感覚もでてくる。そこで,上半身が楽になり,座っていることがとても楽に感じるとの感想。骨折箇所に実際に触れることはなかったが,反対側で起きはじめた反応がいつのまにか別の側にも移行したようだ。それと同時にさらに左足の支えがしっかりしてきて,突然,木々の若い葉の匂いが強烈に感じられるという。こうした感覚が急に回復することは,トラウマのエネルギーが解放された場合に頻繁に起こる。ご婦人はしみじみと,震災後はじめてこんなゆったりした気分を味わえたといって喜んでいた。
木々の匂いに突然気がついたその瞬間は,閉じていたシステムが開いた感動的な場面で,思わずワークしている私も目頭が熱くなった。
私の横では,SE仲間でロルファーでもある重さんが,ご婦人のだんなさんを芝生まみれになりながらワークしている。ときおり目の前を通り過ぎるお孫さんを見るご婦人の目はとてもやさしかった。

Case B

70代女性 膝に痛みあり。
ワークの内容: 支持の充実のためにふくらはぎに注意を向けてもらう。しばらくして,足にかけて何かが流れる感覚がでてくる。両脚の重さの感覚をタッチを通して感じてもらうことで,次第に上半身の緊張が解けて深い呼吸と楽な感覚を取り戻す。顔がやや赤くなる肌の質感と色に変化が生じた。膝の痛みは消失していた。
最終的にSEメンバーの腕章をしているMiwakoさんに,ニコニコと話しかけ、「私はこれやってもらって幸せだったよ。ありがとうね。」と報告を受ける。

Case C

20代男性,災害を研究テーマにしている大学院生 ここでワークを受けた災害ボランティア仲間から評判を聞いたとのこと。
どろかきを志願して応募したが,避難所のボランティアに配属され,そこで自分が活かせず,無力感と疲労を感じていた。

ワークの内容: 足を感じてもらうと楽な感覚がでてくる。ふとももに不思議な感じが出てきて呼吸が入ってきた。→足を支えることで,肩が楽に感じる。そのとき,被災地に来たけど、思っていたより大変ではないため、自分がボランティアに来たことに対して疑問を感じて肩に力が入っていた、という気づきがでてくる。さらに楽な感じを感じていると,視界に入ってくる木の揺れる様子が心地よいとのこと。視界右側にある避難所をみると、身体のいい感じが持続しない。左側の楽な感じと右側の感覚を行き来し、ちょうどよいところを探してもらう。結果として,久しぶりに楽な感じ。

別のチームメンバーの一人のMiwakoさんが, "肌がピンク色になりましたね" と声をかけると、" 健康的なときはそうなんです、久しぶりに自分の感覚が感じられて、自分のことをあんなふうに扱ってあげようと思いました。 " と返してくれたとのこと。



Case D
50代女性,保健師。午前中にアレが行ったパラシュートゲームに参加。そこから,胸に重い感覚が残る。
ワークの内容: グラウンディングを促す。胸に黒くて重い感覚があり,その感覚が出たがっているように感じる。のどのつまりが感じられ,金色で内側は黒い、重い感じがある。父に虐待を受けたときのイメージが浮かぶ。玄関のイメージから,顔の表情が緩んできた。玄関に対する印象は、祖母が亡くなった悲しい場であると思っていたが、いい場所でもあったのだということに気づく。そこから,脚に震えがでてきて,深呼吸すると,首を通して呼吸が上に入ってくる感じ。ここで出発する時間となったが、「震えているけど、楽です。」と報告し、明るい顔で終了に至る。

チームのMiwakoさんに帰り際に、 " 本当にありがとう、よかったです。いろんなセラピーを受けてきたが取り組めなかった虐待のフラッシュバックに取り組め、この短い時間で手放せました。これからもSEをやっていきたいです。" と報告。テーマは,震災とは関係なかったが,それ以前から抱えているトラウマは皮膜で覆われ,何かのきっかけで,それが破られ,奥から浮上することがあるらしい。今回はそれを表す典型的な例である。


他のチームメンバーも時間的及び場所の制約の中でワークに最善をつくした。受けて頂いた方々から,安全な感覚が得られた,ほっとする感覚を取り戻した,楽な身体を思い出した,視界がはっきりした等の多くのフィードバックをいただいた。,受け手となる人々を確保し,それぞれ適材適所で他のメンバーにつないだりと,メンバー間の連携は実にすばらしかった。



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