2011年5月10日火曜日

被災地での活動のヒント

スマトラ沖地震や四川省の地震などの災害支援を国際的に続けてきた,アレ・デュアルテをリーダーとする支援チームに参加する機会を得ました。彼は,札幌でGW中に行われた上級SEトレーニングのアシストも務め,ロルファーでもあります。 日本でのSEの第一人者,藤原千枝子さんの呼びかけと地元の招きで実現したもので,今回私も他のSEトレーニング仲間5人と共に合流させて頂きました。この5月7日,8日と宮城 七ヶ浜での活動を通じてアレから学んだいくつかの知見をご紹介したいと思います。これから,災害ボランティアとして現地入りをされる気持ちのある方に役立つと思います。

現地入りするに際して大切なこと,自分への問いかけ

1.自分がグラウンディングし続け,他者を援助する側であり続けられる状態にあるかどうか?

現地入りして自分が助けを求める側に転じては本末転倒です。アレはこれまでの支援の中で,何度もチーム内でそれが起きたことを経験しているとのこと。

2. そのクライアントまたは受け入れ団体は,自分が提供するものを受け取ることに適合しているかどうか?

まず,現地入りして大切なのは,その場所での関係性づくり。ただし,最初の受け入れ先が適切かどうかは慎重に見極めなければならない。これをとっかかりとして,ワークする場が確保されます。すでに,それが確保してくれる受け入れ先との関係性が確立している場合はラッキーです。
残念なことに,受け入れ先にとんでもない人間が絡んでいることは珍しいことではありません。宗教がかっていたり,ある種のセクト主義者だったりといろいろです。中には,嘘つきや悪党も実際に存在します。(例:これまできたドイツ人は大勢でやってきて子供を怯えさせた等)その場合は,受け入れ先が,いろんな形でこちらの活動を制約させながら,こちらを一方的に利用する意図が悪質に働きます。まず,それを見極め,信用できないことが判明した時点で,早急に気持ちを切り換え,次につなぐための下地をつくりつつ,その時点で妨害となる人物と戦うことを避けながら,ゴールを見失わないことが大切。

3. 政治的或いは様々な思惑と交渉することにエネルギーを浪費するが,自分の手が,必要とする人達に届くことがゴールであることを見失わないこと。

ゴールはあくまで,被災者にこちらの手が届くことである。チームとして機能するように,必要に応じてミーティングしながら,ゴールへの方向付けを忘れないこと。

4.いつ,ワークを初めて,いつそこを引き上げるか?

5. 何人まで,或いは,どのくらいまでそこでワークするのか?

自分の許容量の目安,或いはどのようにそれを設定したらよいかは,個々の感覚と基準に頼るしかありません。
これなしでは,求めに応じるだけ応じて,燃え尽きてしまい,日常への復帰が困難になります。
自分としては,自分の中がクリアかどうか?を今回基準としました。
また,震災前に受けたトラウマが何かのきっかけで浮上することがあります。その場合には,その一回のワークで受け手の方が統合する必要があるので,内容を掘り下げるのは,その支援の場で行うべき対象ではないので,グラウンディングやリソースとつなげることに焦点を置くべきだと思います。

6.チームで行動する際に,技法の優位性や個人への批判に焦点を当てずに,ゴールを全員が向いている。

これもアレからの話ですが,チーム内部で,テクニックの優位性の主張や,個人の間の批判,対立は常に起こるとのことでした。

7.最終的に,自分が充実した”いい状態”で,そこを去ることが最も大切。

これは,最も盲点になりやすい点で,アレも何度も強調していました。これなくしては,二度と支援に参加することはないでしょうし,燃え尽きてしまった場合は,何日も鬱状態が続いたりする危険性があるとのことでした。
今回の支援では,チームのメンバー全員が,制約や困難にも関わらず,やれることを全部やって,充実した体験を胸に帰宅することができました。

8.特定テクニックだけを提供するのではなく,それを超えた自分のすべてをニーズに合わせて提供する。

現場で提供するのは,型にはまったやり方では役に立たないでしょう。相手も様々な条件に合意した上でオフィスにくるクライアントとは異なり,被災地の方がワークさせてくれるかどうか?の交渉は一から始めなければいけません。一個の人間として,対峙する必要があります。押しつけず,かといって引いてばかりでもなく。

9. Be gentle, Be patient and Big Heart !

アレが適材適所で指示を出す中で何度も口にしていた言葉です。
すばらしい野郎でした。

10.その他

仙台はとにかく風が強く,復旧中の場所からの粉塵が俟っていて,目や呼吸器に負担がかかるので,放射能以前にマスクは持参した方がいいです。SEやロルフィング他,技法/療法によっては,解放に伴って,さまざまな自働運動や傍目からみると奇異に映る反応もでることから,それを行ってもいい環境を確保する必要があります。避難所は,公共の場でありながら,居住されている方にとっては,家の一区間でもあるので,場所の確保は容易ではありませんし,バウンダリーを超えてしまう可能性は常にあります。しかしながら,被災者に実際に手が届き,トラウマの解放の手助けができたなら,その行為が管理側の制約の枠に出てしまったとしても,恩恵はそれを上回ればいろんなことは帳消しになるし,それは実際のワークでしか返せないと思った次第です。

2.の補足として,受け入れ人物の見極め方として,以下の徴候があれば疑わしいです。

何かと恩着せがましい言動が目立つ。
反対意見をいうと,異常な神経の高ぶりと興奮をもってそれを押さえつけようとする。
これまで受け入れたグループを悪くいう。
子供を落ち着かせるのに,お菓子を使う。→子供の健康を考慮していない。
受け入れたグループが提供する機会をなるべく制限しようとする。講演時間を短縮したり,個人のワークを制限してくる。
結局の目的は,自分達がやっていることが一番であるということをアピールすることに優先順位がある。従って,新しく提供されるものから学ぼうとする姿勢は感じられない。
そこで提供されたものは,自分たちが表にでないところで恩恵を受ける行動表を作成している。
取り巻きの人間が逆らえないように巧妙にコントロールしている。
事前に子供達に指示を出しておき,全員が参加しないよう予め設定しておく等。

 
 
 
 





1 件のコメント:

  1. ひろさん、
    素晴らしいまとめ、ありがとうございます。
    …しかし、ここまで書いてしまうとは、ひろさんお見事です。
    ひろさんの勇気に脱毛!(笑)。

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